カール・ポパーの反逆。検証主義から反証主義へ。
前回の続き。『科学哲学への招待』の第10章を参考にしています。
論理実証主義の隆盛する中で、それに反発を持ち、克服しようとするものが現れた。その一人が、カール・ポパーである。
1.帰納法の否定
帰納法とは、個別的命題から普遍的命題を導き出す論証である。(p115)
あのリンゴは赤い。このリンゴも赤い。
→ すべてのリンゴは赤い。
帰納法は、私たちが日常の中で普通に用いている推論方法でありながら、その正しさを証明することは困難を極める。上の例で言えば、赤いリンゴが100個、1000個、あるいは10,000個あったとしても、青リンゴが一つあれば、「すべてのリンゴは赤い」という命題は偽になってしまう。
ポパーはこの点を重んじ、科学的方法の中から、不確実な帰納法を取り除こうと考えた。
2.反証主義
そこで、科学の確実性を高めるために彼が提唱したのが「反証」の概念である。
命題Aが正しいならば、命題Bは正しい。
命題Bは正しくない。
ゆえに、命題Aは正しくない。
これは、正しい推論である。すなわち、「正しい」ことを証明することは難しくても、「誤りである」ことを証明するのは容易い。この「誤りであることを証明」するのが反証である。先に挙げたリンゴの例でも、青いリンゴが1つあるだけで、「すべてのリンゴは赤い、という命題は間違っている」ことが証明できる。
ここから、ポパーは科学とは、仮説を提起し、それを反証していくプロセスであると捉える。